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保育園、幼稚園の設計

弊社では、保育園や幼稚園の設計をする際、建築と自然が融合した豊かな環境をつくりたいと考えています。本郷台教会の保育園では、1階が保育園、2階がチャーチスクールというプログラムを、「森と建築が混ざりあう建築」というコンセプトで設計を行いました。



敷地調査

2008年春、敷地と周辺環境について調査を行ないました。この敷地は、横浜市内でありながら、周囲には小高い山、公園、ゴルフ場、サッカーグラウンドといったものに囲まれて、広がり感があり、また周囲には緑も多くあり、子供たちの居場所を計画するには、たいへん恵まれた場所でした。



本郷台教会の保育園を視察

教会の牧師先生や、保育園の先生方から、既存の保育園をご案内頂き、保育室、礼拝のホール、厨房設備、スタッフ動線、日々の運営や、子供たちの生活等々について丁寧にご説明を頂きながら、本郷台教会の保育園について勉強させて頂くところからスタートしました。



基本設計、横浜市との協議前

教会の牧師先生から、子供たちがのびのびと過ごせる豊な空間、心に壁のない子供たちの環境、といった思いを託して頂き、既存保育園での運営スタイルや機能性も踏まえ、基本設計案の作成にとりかかりました。当初、敷地面積が大きくとることができる可能性があったため、十分に広い敷地面積のなかに、平屋でのびのびと大きな床面積による計画を行ないました。建築の中に居ても森の中に居るかのような、木々と建築が混ざりあう配置計画を、当初は曲線による平面計画によって実現しようと試みました。



横浜市との協議

特殊な事情により、横浜市との事前協議と、それに伴う審査会、幹事会にかけ審議されることが不可欠でありました。審議された内容については割愛させて頂きますが、これは困難な道のりでありました。協議は6が月にも及びましたが、幸運にも建設可能という結論に至りましたが、延床面積の厳しい制約と、総2階で建設するという条件となりました。

建築と森が、有機的な曲線によって混ざり合う平面計画

有機的な曲線が、森の中をかけめぐることで平面計画ができ上がるようなイメージで、平面図、配置図、1/100、1/50の模型を作成し、検討をしました。



かき混ぜる、という原理の発見

建築と森が混ざりあう平面計画を、文字通り「かき混ぜる」ような一筆描きの原理で実現できないかという発見をしました。有機的な曲線でかき混ぜるラインを描き、それをグリッド平面に変換するという平面形式です。



第1回プレゼンテーション

1/30の模型を作成し、牧師先生や保育園の先生方に見て頂きました。牧師先生から託して頂いた「心に壁のない保育園」というイメージの実現と、保育園の先生方から頂いた様々なご意向を反映し、丁寧に作り上げた全体計画です。



透明なガラス建築を、木造で構想

子供たちが使う保育園ですから、鉄骨造でつくるのではなく、木造でつくりたいと思いました。空間の中に現れてくる構造の柱が、鉄であるよりも木である方が、0歳児から18歳児までの子供が過ごす施設としては、良いと思ったのです。

構造をアラップ与那嶺さんに相談

木造の柱、梁で実現する方法として、この建築では、5つの中庭部分に、木造の柱、梁がある状態で、その屋外側にオフセットした位置に、鉄骨の耐震フレームを挿入することで、耐震要素の存在が見えていながら、見えないような不思議な存在感として実現する方法を、アラップ与那嶺さんが提案して下さいました。建築基準法で要求される地震力の負担を、上記構造計画で可能とします。そして、さらに安全性を増すためにオプションとして、地震力を負担できるガラスを各階4カ所設置して、ガラスの下部分に制震オイルダンパーを仕込み、地震力を吸収する構造計画としています。



ガラスの実大実験

日本大学の空間構造研究室の大型構造実験施設にて、強化ガラス19mmが、地震の力を負担できるかどうかを実物大で実験を行い確認しました。5トンの力に耐えられればよいところを、15トンかけてもガラスは割れませんでした。



地鎮祭

教会の牧師先生により地鎮祭を執り行われました。地盤改良のラップルコンクリートのための穴に、聖書を埋め、お祈りを捧げました。



基礎工事、鉄骨建て方

基礎のコンクリートを打つ前に、5つの中庭の鉄骨フレームの建て方を行ないました。鉄骨フレームの柱の足下を、基礎の鉄筋コンクリートに埋め込むことで、地震力を負担するためです。



木造部分の建て方

鉄骨耐震フレームに寄り添うように、木造の柱、梁の建て方が行なわれました。仕口はクレテック金物を用いて、鉄骨フレームとの取り合い部や、ガラス制振壁との取り合いなど、入念に確認しながらの建て方でした。



くるみの無垢材の床

この建築では、1階の保育園も、2階のスクールも全部、くるみの無垢材を床に貼りました。足でかけずりまわったり、寝転んだり、子供たちはのびのびと自由に過ごすことができます。



ガラス引き戸の窓

窓は全部ガラスの引き戸になっています。どの部屋も3面または4面が屋外に面している計画であり、引き戸を程よく開けて、自然の空気を取り込んだ気持ちのよい空気環境をつくります。冬は太陽の光でぽかぽかと暖かく、また寒い日の対策として全部のガラスをペアガラスとしています。



ハンモック

1階の保育園の広いスペースの天井面にフックをつけて、ハンモックを2つ吊りました。ハンモックで遊んだり、ぼーとしたり、本を読んだり、森の中に溶け込む環境を、屋内にいても楽しめるようにと思いました。屋外の樹木も10年も経てば大きな木に成長して、ハンモックをかけられる日がくると思います。その日を楽しみにしています。



絵本ベンチ

1階の保育園にも、2階のスクールにも、至る所に絵本ベンチを設置しました。子供たちは、木のベンチに座って、話をしたり、本を読んだしできます。図書館に行かないと本に出会いないのではなく、至る所が本と出会える場所になればと考えました。ベンチのデザインと配置によって、建築全体が本と出会えるような環境を、さりげなくつくるというような計画です。



木の下の家具

屋外に植えた木々の足下に、腐らないスチールでつくったベンチやテーブルを設計しました。大きな木の下で、輪になって授業をしたり、お弁当を食べたり、おやつを食べたり、本を読んだり、放課後お母さんたちがちょっとした談話をしたりできればとイメージしました。これらの家具は、アラップによる構造計算の協力を得て設計したもので、スチールの輪があたかも宙に浮いているかのような軽やかさでつくられています。



さりげない十字架のデザイン

さりげなく寄り添うように風景の中に十字架が存在するようなデザインにより、エントランス脇に建つ十字架を設計しました。十字架が子供たちの環境をそっと見守ってくれているような、そんな存在感をイメージしたものです。十字架はパイプではなく、無垢のスチールによるもので、見た目よりも遥かに耐久性の高いものにしています。天井の直づけの蛍光灯の配置計画も、十字架のモチーフで計画しました。夜になり照明を付けると、無数の十字架が天井に現れます。



建築と森が混ざりあう豊かな植栽計画

植栽計画は、10年後、20年後に森のような環境となることを目指して計画しました。40本以上の樹木のほとんどが高木になるものを選びました。ケヤキ、クヌギ、シイ、ナツミナン、スモモ、オリーブ、モミ、シマトネリコなど、常緑、落葉、果樹、雑木など、多種多様に植えることで、多様性に満ちた樹木環境が生命力豊かに育ってくれることを期待しました。樹木の成長とともに、建築と森はより豊かに混ざりあい、子供たちの生き生きした生活の場を形成してくれると考えています。



サイン計画

サイン計画は、小島寛子さんにお願いしました。建築の中に現れるサインにも、ちょっとした思いを込めるこめることで、隅々まで思いを込めた環境をつくりたいと思いました。道路に面したアプローチ横の看板の文字フォントや、看板裏面を利用した聖書のことばなど、素敵なアイデアを提案して頂きました。また、トイレのサインは子供の手に鳥がとまっているシルエットになっていて、聖書のモチーフをさりげなく取り入れたデザインになっています。



屋根、防水

フラットフーフで、外周部と中庭に水受けの問いを仕込んだ屋根の防水として、屋根も樋もケラバも一体でシームレスに防水できる、ウレタン塗膜防水としています。ダイフレックスによる施工により、ケラバ部の見えがかり面のテクスチャーにも十分配慮した、美しい屋根防水となっています。見えない部分ではありますが、一筆描きの平面形式の原理が、屋根の樋に純粋な形で現れていることも、美しいと考えています。



完成「クリスタルチャペル」

このようにして完成した建築は、竣工時に教会の皆さんにより「クリスタルチャペル」と命名されました。計画の当初、牧師先生がおっしゃっていた「心の壁がない建築」がクリスタルというイメージとなって、建ち上がったと思っています。木々の成長とともにより豊かになっていく計画です。10年後、20年後には、生命力溢れる森のようになって、別名「フォレストチャペル」というイメージになっていってくれたらな、と密かに思っています。



宮城県の七ヶ浜町の遠山保育園コンペ

2011年に震災によって使えなくなってしまった保育園の再建のためのコンペに参加し、ファイナリストとなりました。このコンペでは、平屋ののびやかな構成としつつ、動線や安全性にも十分に配慮し、木々と混ざり合う豊かな建築を提案しました。本郷台で経験した一筆描きの平面形式を、鉄骨を用いず木造でローコストで実現できる構造形式を構想し、クオリティを高めて提案に至りました。たいへんシンプルな工法でありながら、森と建築が混ざり合う建築を実現するというものです。



最後までお読み頂き、有り難うございます。

「保育園、幼稚園の設計について」をご覧頂き有り難うございます。私たちは、子供たちの居場所が自然と融合した豊かなものでありたいという思いを持っています。都会の中で自然の要素が乏しい敷地であっても、あきらめずに思いをもって設計することで、太陽の光や自然の風、木々とともに生き生きと生活する子供たちの居場所が実現できると考えています。



このような考え方や、建築の作り方によって、子供たちの豊かな居場所として保育園、幼稚園などを計画していきたいと考えております。是非、お施主さまと一緒に、次世代を担う子供たちの豊かな環境をつくって行ければと思いますので、お気軽にご相談下さい。